日本と他国の信号機の比較

普段、街でよく見かける交通信号機。しかし、そんな信号機一つをとっても、国ごとに事情が異なり、一緒くたに考える事は事実上不可能である。

 

 日本では、信号の現示は「青→黄→赤→青」の順に変化するが、ヨーロッパには、赤と青の間に黄色信号をもう一度挟む国が多い。信号が青に切り替わる際に表示される黄色信号の主な意義は、ドライバーに発進準備を促すことにある。日本ではAT車の普及率が高く、発進に時間を要さないが、欧米諸国では発進に時間の掛かるMT車の普及率が比較的高い国が多い事も、黄色信号の意義をより確かなものにしている要因の一つであろう。

 

信号のサイクル長も、各国によって違いがある。サイクル長とは、信号の現示が「青→黄→赤→青」へと一周する時間の長さを指す。全体的に、日本の信号交差点のサイクル長はヨーロッパのそれと比べて長いといわれている。サイクル長が短すぎると自動車のストップ&ゴーが多くなり、自動車交通にとっては非効率的となると考えられる。一方、逆にサイクル長が長すぎると、赤信号が長時間化することにより通行者へのストレスを増長させ、赤信号になる直前のタイミングにおける無理な横断を増長させる可能性がある。

また、自動車交通以外の視点から考えると、例えば歩行者は発進にほとんど時間を要さないから、歩行者ファーストの交差点では、サイクル長を短縮することで、通行者のストレスを最小化できる可能性がある。

他にも、アメリカのポートランドでは、道路が碁盤目状となっているうえ、ブロック長(交差点間の長さ)が60m程度と短く、サイクルが短い方が車両交通を制御しやすいなどの理由により、サイクル長が短く設定されている。

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アメリカ・ポートランドの道路網の一部。縮尺に注目

 日本で行われている事例を、そのまま海外にコピーするだけでは上手くいかない事例が多いが、それは交通信号機についても同じ事が言える。   

ネパールでは、日本企業の寄付によって日本の信号機が首都・カトマンズに設置されている。しかし、現地の人々に信号機を守る文化が定着せず、導入から数年後に信号機が停止してしまった。そして、旧来の交通島や警察官を用いた交通整理が続いている。そんな今、現地の信号機は、点灯も撤去もされず、街に居座り続けているのである。

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ネパールにある『点灯していない』日本の信号機たち

また、日本と違い、アジア諸国では、青現示が赤に変わるまで、或いは赤現示が青に変わるまでの残り時間を表示している国が多い。赤信号の際に、残り何秒で青信号に変わるかが分かる事で、信号待ち時のストレスを軽減出来るという話もある。しかし、海外の方が一目見て良さそうに見えても、それをそのまま日本に導入できるかどうかは別問題である。実際に、青信号が残り何秒と表示される事で、焦って青信号を通過する人が増えている事例も存在する。

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海外のカウントダウン機能付き信号機

 

 

しかし、目先の危険性を重要視するだけでは、利便性や効率性を必要以上に損ねるばかりか、本当の”安全”をも見失ってしまう気がする。

 

良いものは良いものとして、日本も何とか見習っていきたいものです。

 

【完】